ある祭で毎年評判の的屋があった。そこに行くと店主が、客に向かってこう言っていた。「このゲームはコインを5回投げて表が出た数✕1千円がもらえるゲームだ。3回表が出れば3千円だ。シンプルだろ。但し、賞金を簡単に持っていかれては困るから、コインが少し曲がっていて、表が出る確率は\(\frac{1}{3}\)になってる。ゲーム代は普段なら1,900円だが、1割引きの1,710円にしておくよ。えーい、今日は端数もいらねぇ。1,700円だ!持ってけ泥棒!!」。
さて、貴方はこの勝負に乗るか降りるか…。
「へぇ、5回のうち2回だせば元が取れる。5回出したらボロ儲けだな」と言って乗る人もいるだろう(自分はこの手の者だなw)。
「いや、まてよ、期待値を計算すると1,667円だから、乗らない方がいいだろう」という冷静な人もいるだろう。
直感的な期待値計算はこうなる。1回あたりの期待値が\(確率変数1,000円✕確率\frac{1}{3}=333.\dot{3}円\)だから、その5倍の\(1,666.\dot{6}円\)
心配な人の為に、公式にも入れてみよう。
\[
Σ確率変数✕確率\\
={}_5C_5✕5,000✕\big(\frac{1}{3})^5✕\big(\frac{2}{3})^0+{}_5C_4✕4,000✕\big(\frac{1}{3})^4✕\big(\frac{2}{3})^1+{}_5C_3✕3,000✕\big(\frac{1}{3})^3\big(\frac{2}{3})^2+\\
{}_5C_2✕2,000✕\big(\frac{1}{3})^2\big(\frac{2}{3})^3+{}_5C_1✕1,000✕\big(\frac{1}{3})^1\big(\frac{2}{3})^4+{}_5C_0✕0✕ \big(\frac{1}{3})^0\big(\frac{2}{3})^5\\
=\frac{1✕5k}{243}+\frac{5✕4k}{243}+\frac{10✕3k}{243}+\frac{10✕2k}{243}+\frac{5✕1k}{243}+\frac{1✕0}{243}=\frac{405k}{243}=\frac{81✕5k}{81✕3}\\
=\frac{5k}{3}=1,666.\dot{6}円
\]
さて、貴方は運悪く3回投げて3回とも外してしまった。店主が「ちょっと待った!旦那、3回連続裏なんて珍しい。このままじゃ気の毒だから、助け舟を出すよ。あと700円追加でもらえたら、残り2回の賞金を倍にするよ。表が1回で2,000円だ。仮にこのまま続けて表が1回だと700円の損。仮に表2回出せても大した儲けにはならねえ。700円追加すると、1回表を出せば400円の損で抑えられる。2回表出したら4,000円もお持ち帰りだ!旦那は3回も連続で裏だ。表が出そうな頃だし、いい話だと思うよ。うちが良心的だと評判なのは、実はこのシステムのお陰なんだ。」
さて、貴方はこの勝負に乗るか降りるか…。
「確率変数が倍になったから確率変数の期待値も倍。つまり、\(2,000円✕\frac{1}{3}✕2回=1333.\dot{3}円\)。これを700円で?そりゃ乗るよ。店主、サービス良すぎだが、商売は大丈夫か?」と考えてしまいがち。だが、実は落とし穴がある。残り2回の確率変数の期待値のうち、\(1,000円✕\frac{1}{3}✕2回=666.\dot{6}円\)は、最初のお代金で回収済みだ。だから、追加でもらう700円はもう半分の\(666.\dot{6}円\)分となる。狸親父め。絶妙な価格設定やな。
だが、心理的には本当に助け舟に思えてくる。狸親父とは言え、儲けもわずか33円で、大きな賭けをさせてくれるんだから、悪くない。残り2回で表が1回でも出たお客さん(\({}_2C_2✕\big(\frac{1}{3})^2\big(\frac{2}{3})^0+{}_2C_1✕\big(\frac{1}{3})^1\big(\frac{2}{3})^1=\frac{5}{9}=55.\dot{5}\%\))は「700円追加してよかった、ありがとう」と言って帰っていくだろうし、2回外したお客さん(\({}_2C_0✕\big(\frac{1}{3})^0\big(\frac{2}{3})^2=\frac{4}{9}=44.\dot{4}\%\))はむしろ「5回とも外す俺が悪い」と言って納得して帰るかもしれません。店はこれを続ければ着実に儲けは出ますし、Win-Winですね♪
実はこれ、分布の期待値?の追記で「コインを少し曲げてあるので、表の出る確率は\(\frac{1}{3}\)、裏は\(\frac{2}{3}\)だ」と考えた所から着想したゲーム。
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